Sunday, April 25, 2010

直感と先入観

私が愛してやまない英国のスーパーM&Sは、その食料品の質の高さもさることながら、下着や洋服でも有名。英国では、おばちゃん向けの質の良い下着といえばM&Sらしい。

私もロンドン時代はKing's RoadのM&Sに足しげく通い、日常の食料品や日本帰国時のお土産、さらにシャツや下着に至るまで、いろいろと買い物をしていた。いまでもM&Sのフレッシュオレンジジュース、クッキー、ピスタチオ、クリスプスなどを懐かしく思い出す。本当に美味しかった。また鶏肉やラム肉も美味しかったし、野菜や果物は外れがなかった。Coxもパッションフルーツも美味しかったなあ。

いまもしM&Sのものが目の前に出て来たら、間違いなく大枚はたいてでも飛びつくだろうな。が、残念ながら日本にはM&Sがないので、あの味に巡りあうことは、ロンドンに行かないとないと諦めている。

また、M&Sの靴下と仕事用のシャツが安くて着心地が良いので、こちらも愛用していた。ロンドンを去る際に、シャツも靴下もある程度買って帰国したのだが、靴下は履き心地は良いのだがどうも生地が弱いらしく、すぐに穴があいてしまう。で、帰国してから半年でどんどんストックがなくなってきた。

ということで靴下を買わなきゃなーと思って、仕事の合間にネット通販をぼんやり見ていて、ふと思いついてM&S online storeを見てみたら、なんと、日本に配達してくれるではないか!送料も£15と比較的リーズナブル。思わず靴下とシャツを買ってしまった。早く着かないかな。楽しみ。ちなみに、M&Sの海外配送はおそらく衣料品のみだと思う。このonline storeには残念ながら食料品はなく、あの絶品のクッキーは送ってもらえない。これはロンドンに行ったときの楽しみにとっておこう。

ところで、英国は食事が不味いという都市伝説がある。

実際、私がロンドンは食事が美味しかったと言うと、10人中10人が、ええっとびっくりする。この英国=食事が不味い、というのは全くの間違いで、特にロンドンは世界有数のグルメ都市であり、ものによっては東京で食べるよりも遥かに美味しい。では、なぜイギリスは不味いと多くの日本人が信じているのか。

たしかに、キドニーパイに代表されるような昔の英国の伝統料理はあまり美味しいものではなかったし、野菜をべちょべちょに煮込んで、味付けせずにサーヴすることもあったと思う。これが、1990年代初頭からのレストランブームによって劇的に改善され、料理の質は格段に向上した。もともと、食材の質は一流だし、欧州全土から美味しい食材も料理人も入り易い環境にあるので、そりゃ美味しくなる。当たり前と言えば当たり前。

こういった最近の動きを、おそらく多くの日本人は知らないんだろうな。かつて誰かが言ったことを盲目的に信じているだけだろうし、ツアー旅行で行くようなレストランでは、いまだにそういった伝統的な不味い料理を出しているのかもしれない。いまや時代は違うことを、是非是非理解して欲しいと思う。

ちなみに、世界一食事が不味い国は米国だと思うが、それは何故か誰も言わない。不思議。もちろん一部の例外はあり、NYのハンバーガーやチーズケーキ、LAのパンケーキなど大好きなものもあるが、一般のレストランであんなに食事が不味い国はないと思うんだが。

なぜこんなことを長々と書いたかと言うと、昨日、とあるシンポジウムに行った。そこで、英国と米国から学ぶべきことがあるという発表者の発言に対して、座長が英国と米国はわが国に比べて(とあるサービス業の)質が低いのに、そこから学ぶべきことなどあるのか、という質問をしていた。

確かに、私の専門分野では英国のサービスの質はそれほど高くない、と言われていた。実際私も、サッチャー時代にいろんな意味で落ちるところまで落ち、メージャー政権になっても、そこから這い上がれずにもがき苦しんでいた時代を知っている。

でも、でもでもでも、英国の素晴らしいところは、その悪い部分をしっかり認識し、ブレアの時代に大鉈を振るって国を挙げて多大な予算と人材を投入して改善に取り組み、いまや日本を凌駕して来ている部分も多々ある。英国で研究をしていて、日本のダメダメぶりに呆然としたことが何度もあるほどだ。私は、いまや日本が英国から学ぶべきことがたくさんあると感じている。それをおそらくはご存じなかったご発言だったと思うし、いまだにそう信じている人が多いんだろうなと感じた。とんでもない。日本は胡座をかいていてはダメなんですよ。

一度植え付けられたイメージを崩すのは難しい。英国の料理は不味い、英国のサービスの質は低い、というイメージがいったん出来上がってしまうと、いつまでもそうなんだろうと思ってしまう。しかし、実際には物事は動いている。良い方向に動くことも悪い方向に動くこともあるが、聞いてきたこと、信じていたこと、感じていたことが、時間とともに変わることは多々ある。

私は、こういった動きに柔軟に対応できるようになりたいと思っている。そのために、他人が言っていることをやみくもに信じるのではなく、自分の五感で感じたことを信じたいと思っている。口で言うのは簡単だが、実行するのはなかなか難しい。物事をまっすぐに見据えることや、頭の柔らかさが要求されることだと思う。でもそうありたいと思い、日々心がけていることでもある。

また、物事は時間とともに変わることにも対応したいと思っている。もうダメだと感じたことでも、簡単に諦めるのではなく、時間とともにその印象が何らかの理由で改善されることもあると信じている。もちろん、逆もあるとは思うが、希望は捨てたくない。

そんなことを思いながら、またロンドン時代と日本帰国後の時間、特に帰国から年末までの激動かつ思い出深い数ヶ月を思い出しつつ、相変わらず肌寒く暗い田舎道を歩いて帰路についた。

いろいろ頑張らねば。

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